赤紙・公費解体の家を片付ける
ボランティアセンター経由のボランティアさんは、半壊以上の家には入ることができません。
安全面を考えれば仕方のないことですし、何かあってボランティア受け入れが止まってしまうことこそ問題ですから、そのルールは全面的に肯定します。
Futoは知り合いのお手伝いをベースにしています。
そのため、逃げ道や安全を確保した上で、自己責任で、半壊以上のお家にも入ります。
先日入らせてもらった、相神(あいかみ)地区のお宅の判定は「全壊」。
家を解体するので荷物を運び出したい、とのご相談でした。
相神地区は砂地で、周辺のおうちもほとんど解体するのではないかとのこと。
今回のお宅も地盤が後ろの小川に向かって流れていて、実際中に入らせてもらうと、「気持ち悪い」と思ってしまうほど、家が傾いていました。
2日間をかけて、2階と1階の荷物を運び出し、不必要なものは災害ゴミや燃えるゴミへ。
必要なものは半壊の納屋へ運び込む作業。

このお家は1月1日まで、70代のお父さんと、息子さんご夫妻、その娘さんがお住まいでした。
近隣にご親族も住んでおられるし、それなりに人手はある方だといえます。
けれども、正直、2階は地震後からあまり片付けが進んでいるようには見えませんでした。
そのわけは、息子さんご夫妻はじめみなさんがお仕事につかれており、災害対応に追われているからということもあります。
また、町外にみなし仮設を借りて住まれているため、なかなか時間がとれない、ということもあります。
さらに、作業をしながらふとつぶやかれた家主さんの言葉にも、その訳の一つがありました。
「家族でやっていると、いるいらない、で物を見ちゃって全然進まなかった」
「それもういらんやろ、って思うものでも、父は捨てないからねえ」
家族が4人暮らせば、4人それぞれの人生で出会ったものがあり、思い出があります。
発災後すぐの「全部捨てて、全部ゴミ」と思っていた段階からはすでに変わってきています。
解体すると決めても、家に、ものに、思い入れがない方はほとんどいないでしょう。
そんなとき、私たち「外」の人が入ったことで、少しだけ、この赤紙のおうちにも、風が流れたかな。
家主さんは「外の方がきてくれて、一気にきれいになって、やっと進んだ気がする」とおっしゃってくださいました。
お父さんも、「ああ、片付いた。本当よかった、よかった」と満足そうに言ってくださいました。
公費解体の場合、運び出しが難しければ、家財はそのまま置いておいていい、ということになっています。
でも、完全に潰れてしまって立ち入れないおうち以外は、みなさん、片付けようとなさいます。
今回のお家も、最初は必要なものだけ運び出せれば、というご依頼でした。
重い家材を運び出した後、ゴミと判断されたものも袋にまとめて、掃き掃除をしていたところ、家主さんが遠慮なさって
「公費解体だったら全部置いておいていいっていうけどねえ・・・どうなんかね」
と聞かれました。
「もちろん状況だったりそれぞれの判断ですが、私たちはできるだけ綺麗にしたらいいのかなと思ってお手伝いしています。建物にとっても、おうちのかたの気持ちにとっても・・・」
と答えました。
そこで「いいのいいの、そんなしんくても」と言われればやめますが、家主さんは
「そうだよね。解体のときに、変な書類とか飛んでってもかっこわるいし」
と少しホッとしたようにおっしゃっていました。
個人的な感想ですが、必要なものだけを取り出した家って、なんか泥棒が入った後みたいで、やるせないのです。
もちろんそれを押し付けることはしませんが、持ち主さんだって気持ちの良いものじゃなんじゃないかな。
公費解体を待つ別の方は、
「できるだけ業者さんの負担にならないように、自分で片付けられるものは先に片付けておきたい」とおっしゃっていました。
今回は、福岡県、岡山県、愛知県から来てくれているベテランボランティアさんと入りました。
2人は長期でリピーター、お一人も短期ですが経験豊富なリピーターさん。
慣れたみなさんは本当に頼もしい。
彼らが100人いてくれれば、赤紙の家も片付けれるし水道も直せるし農業もできるしサウナ用の薪も切ってこれるし・・・
それにしても公費解体後の分別って、どうするんだろう・・・