top of page

物資はプレゼント

誕生日プレゼントを選ぶのは、難しい。

じゃあ物資を選ぶのは・・・?


思い返してみると、被災直後から数日は、物流が滞っていたこともあり、物資に生活を助けられていました。

(以下は、あくまで、私の場合ですが)

地震発生後から1週間、避難所生活を送っていた我が家族。

夜は避難所に戻っていましたが、日中は家の片付けなどをしていました。

水が出ない、家はぐちゃぐちゃ、トイレは雨水をバケツで汲んで流してたし、もちろんキッチン周りも使えない状況。

なので、飲料水はもちろん、ウェットティッシュ(特にアルコールじゃないもの)やインスタント食品がとてもありがたかったのを覚えています。

(タオル、ゴミ袋、作業用手袋は自宅の備蓄でまかないました)


避難所では、飲料水、食料品、日用品・消耗品は生活の基盤で欠かせないものだったし、個人的に提供した歯ブラシや紙コップ、マウスウォッシュ、インスタントコーヒーやお湯で溶かすだけのお茶などの温かい飲み物が、とても喜ばれました。



しかし、その後、時間が経つにつれ、物資を取り巻く状況は徐々に変化していきます。

地震発生後何日後だったか忘れてしまいましたが、いただくもののはほとんどが、「もう少し早かったらねえ・・・」と感じるばかりに・・・

同じものでマイナーチェンジみたいな物資が多く集まっていて、配る方も置き場に困って、半ば押し付け的に配布。その頃は自宅避難していたんだけど、家には物資の不思議な山が出来上がってきました。


善意で送ってもらっているとわかりつつ、送ることで満足しているのでは?と感じざるを得ないものもあったし、批判を覚悟で言うのであれば、「これ、みなさんが普段の生活でもらって、使いますか?」と感じてしまうものもたくさん受け取りました。


そもそも、物資が届くようになるということは、概ね道路や物流が復活したということ。


もともと肌の弱い私は大手メーカーの商品(洗剤、日用化粧品、衣類)が苦手だったし、生理用ナプキンは素材がやさしいもので羽付きがよかったりするので、店が再開しているのであれば、自分で選んで購入したい。そもそも、店舗の営業が再開しているなかで物資に頼り続けることにも躊躇がありました。


食事に関していうと、最初の数日はやレトルト食品やカップ麺を美味しくいただいたけど、さすがに1週間続くと体がきつくなってきます。

断水を考慮していろんな食品をいただきましたが、今思うと、私たちがしたかったのは、水が出ないなかで行う「新たな工夫」ではなく、できるだけ「水を確保する工夫」をした上で、普段通りの食生活を取り戻すことだった気がします。

慣れない缶詰やレトルト食品を食べるより、重くて大変でも配水を受け取って、新鮮で温かいものを食べる。

そういった人間らしい生活こそが、災害時の生きる活力になっていた気がするな。



物資を配る活動も、何度かお手伝いしました。


同世代の知人から「オムツ使わない?大人用の」と聞かれ、戸惑ったことを思い出しています。


教えられた場所に行ってみると、地震で傾いた納屋に、物資として届いた大量の大人用のオムツが積み上がっている。

知人は仕事柄、日夜復旧作業に追われているので配布に手が回っていない状態。

「誰か必要としてる人に渡してほしい」と相談をくれたのでした。


当時、たまたま知り合ったばかりの介護施設さんが喜んで受け取ってくださったからよかったものの、そうでなければ、施設を片っ端から回って「オムツいりませんか」と問い合わせるしか術がなかったと思います。

もしくは、ゴミとして廃棄するしかなかった。



物資というのは、被災状況、被災地の立地や復旧のステージによって求められるものが違ってくるし(しかも日ごとに変化する)

ある意味、ボランティアのコーディネートと同じで、受け手にもかなり負荷がかかることだったりします。


善意だとわかっているからこそ蔑ろにできないし、「選り好みしていることが贅沢なのか?」と変な気持ちになるし、いざ不要になって廃棄しなくてはいけないとなると、精神的な負担が大きい。



「物資って一体なんだっけ?」という疑問を頭にめぐらせながら、

Futoは「物資」の窓口には、なれないし、ならない。

そう、早い段階で決めたのでした。



しかし、そんな私の心を変えるできごとが・・・。


あれは2月下旬のこと。

きっかけになったのは、意外や意外。金沢の知人がくれた「高級基礎化粧品のキットの物資」でした。


「物資として会社に届いたんだけど、上司が、災害時の役に立たないって仕舞い込んじゃって。迷惑じゃなかったら使って」

と、渡された私の第一声は「わあ・・・こんないいもの?!めちゃくちゃうれしい!」でした。


当時はまだほとんどの地域で断水が続いていて、多くの人は自衛隊風呂に通っていました。

混んでいるため、できるだけ早くあがって、仮設テントの中でそそくさと髪だけ乾かして帰る、といった生活。

おしゃれとか美容とか「余裕」の部分は遠くに置いてきぼりです。

そのワイルドさを楽しんでいた反面、どこかで少しずつストレスがたまってたのかな。

このご褒美的な「物資」がすごく嬉しくて、同時に、「支援者の仲間や、お母さんたちに渡したいな」と感じたのでした。



物資というと、どうも配給的な感じがするんだけど、プレゼントと考えたらどうだろう?

「配る」じゃなくて「贈る」もの。

自分が欲しいと思えるものを選ぶ、相手のことを思って選ぶ、プレゼント。


それが、Futoらしい「物資」なんじゃない?



そう思い立つやいなや、これまで愛用していたメーカーさんのウェブサイトを検索して、お問い合わせフォームから、支援をいただけないかと、直接メッセージを送っていました。


前述の通り、肌の弱い私は、その時すでに愛用品が底を尽きていて町外に買いに行くこともできず、何かもらえたらうれしいなという私欲を持ちつつ・・・


その時に書いたメールの内容はこんな感じ。



ーーーーー


手土産としてささやかで嬉しい贈り物があれば、「いい匂いのもの持ってきたよ、使ってみて~」と顔を見にいく理由にもなるし、自宅や仮設などで一人暮らしをしている女性たちへのサポートのきっかけにもなります。


また、食事や衣類などの物資はいただくものの、化粧品やボディケア関連などは贅沢、余裕の部分として見られがちで、皆さん購入も遠慮しているのが現状です。


さらに、志賀町では大きなボランティア団体が入っていないこともあり、被災者が支援者という状況。

1月1日から蓄積した支援者の疲労も大きくなっています。そんな支援者の方に少しでも元気で美しくいてほしいという願いも込めています。


支援者というのは、私の身近なところだと、避難所の運営者、ボランティアスタッフ、大工さん、設備屋さん、瓦屋さん、石材店など。1月1日から週7、休みなく働いています。多くは男性なのですが、実はその陰に「我慢を強いられている奥さんたち」がたくさんいます。彼女たちは、不安ななか家で一人でいなくてはいけなかったり、家事子育て片付けすべてを一人でしなくてはいけなかったり。彼女たちも含めて私は「支援者」と考えています。


ーーーーー




そして、こんな唐突なメールに、すぐに丁寧なお返事をくださったのが、ヴェレダさん生活の木さんでした。


私自身、以前から二社さんの製品を愛用していて、強い熱量をこめていた分、支援に快諾のお返事いただけたことがすごく嬉しかったのを覚えています。


二社さんとも「何かできないかと思っていた」とおっしゃってくださり、こちらの要望(内容や数など)を丁寧に聞き取ってくださった上で、すぐにお品を贈ってくださいました。





自宅避難の方に声掛けにいきつつ、「これよかったら使って」と渡したり、立ち話をした支援者仲間に贈ったり。




ヴェレダさんの商品は男性にもプレゼントしたし、




一緒に匂いを嗅いでみるというのは、生活の木の、望月さんからアドバイスいただいた方法。

私自身がいつも癒されることになりました。



介護施設で元日からずっと支援なさっている女性スタッフの方へもお渡しできました。




あの日の私のように、「わあ・・・こんないいもの!うれしい!」という声を何度聞けたことか。

あとあと、「あれすごくよかった」と言われることも、自慢だったな。




もっとも印象深かったのは、能登各所でずっと支援活動を続けている同世代の女性たちにギフトした時のこと。

彼女たちのいずれも、物資を配布する立場にあり、物資が集まる拠点で活動していました。


「ここにいると、物資について思うところもあったけど・・・これは絶対、大切な人たちに直接渡すって決めた!」

「支援者のみんなで使わせてもらうね!」


彼女たちに喜んでもらえたことが、何より嬉しかったな。





果たして、物資ってなんでしょう?


災害直後の緊急対応時は、プレゼントなんて悠長なことは言ってられないし、命を守るための直接的でスピードのある支援が必要です。


ただ、そこに関しては、私たち個人が介入できる限界があるようにも、感じています。



私が今回、ヴェレダさん、生活の木さんから贈ってもらい、地域の人たちにつないだ「もの」は、命を維持するため必要最低限な「物資」ではないかもしれません。


だけど、人が生きていく上で求められるのは、単純に身体を保護したり維持するだけのもの、ではないはず。


精神や心のバランスを、守ってくれる、育んでくれる、満たしてくれる、励ましてくれる。

そういう「物資」だって、あっていいんじゃないかな。


voluntary association Futo

​石川県羽咋郡志賀町富来地頭町

  • Facebook
  • Instagram
bottom of page