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パッケージ支援


災害支援には、いくつかの段階があります。


いろいろと定義はあるようですが、個人的な経験をもとに私見で勝手にまとめてみると、

まず、発災直後の人命救助・生命維持のための、緊急対応の段階。

次に、インフラの回復とか仮設住宅や店舗の建設とか生活再建を支援する、復旧の段階。

そして、地域のこれからに向けて活動を行う、復興・再生の段階。


これらは表記の上では分けていますが、多くはグラデーション・複層的に重なっています。

「復旧完了、じゃあ復興に移りましょうか」なんてことにはもちろんならないので、復旧活動を行いながら、未来を見据え、復興の道筋を立てていくことが求められます。


また、特に公的機関は発災当初の緊急対応を行うと同時に、二次災害や災害関連死などを防ぐため、ある程度短期間で被災者の生活再建に向けて動きだす必要があります。


そこで日本では、「被災者生活再建支援法」という法律を設けていて、その法律に基づいて、「被災者生活再建支援制度」が施されるようになっています。


法令


石川県の場合



もちろんこれ以外にも、市町村独自だったり民間の方々からの支援配布など、さまざまな応援をいただいているのですが、公的機関から受けることができる被災者再建支援はこの制度が基本となります。

この法律は、平成10年5月に施行されていたもので(一部は令和2年に改変)、法令のなかに、建物の罹災状況に応じた支援金額も定められています。つまり、ある意味「パッケージ化」された支援だったりするのです。


自然災害発生直後から速やかに履行されるため法整備されていることは本当に素晴らしいことですが、能登地震後、私たちが感じ続けた「もやもや」の多くは、この「パッケージ支援」に理由があったのではないか?ということを最近感じています。


正確には、この基本的な制度が、ほぼ「カスタマイズ」されないまま現在まで進んできたことに、私たちは疑問を抱いてきました。



今回の能登地震では、制度が施行される際、つまり地震発生直後に、当初の法令では支援の対象となっていない半壊世帯も現金支給の対象とする、という大枠での変更がなされました。


しかしその後、制度を運用する中で見えてきた課題、例えば、今後活用される予定だが発災時点で非住家であった建物について。

能登らしい景観を有した伝統建築や、ボランティア拠点として活用可能な空き家、県外との二地域居住の住宅としていた家・・・いずれも、発災時に住家となっていない建物はすべて、支援の対象外と判断されました。


厳密なルール上は対象外だと理解できます。

特例を認めると今後の対処が大変なのもわかる。


しかし、それらはすべて「今後の可能性」を持った場所でした。復旧の次の段階、復興とか再生といった未来に向けての町を考えるうえで重要な場所だったと思います。


しかし、各機関からのおおむねの回答は「難しいですね」「無理ですね」の一点張り。

工夫される範囲があるとすれば、ただただ、解体のみ。もともと解体できないはずだった建物も、解体できるようになるとか、そういった範囲でした。



半壊以上の建物を解体すると「みなし全壊」となり、該当する世帯に対して100万円の支援金が追加になるという制度も、いつからはじまったのかは不明ですが、熊本地震と同じ支援内容のようです。

おそらく、熊本地震発生当時は、100万円でできることがもっとあったのだと思います。そして、熊本の場合、同じ地域内に、住み替え・居住可能なアパートやマンションがあったのかなとも思います。


しかし、さまざまな価格が高騰している現在、さらに、家がなくなる=仮設に入るか町外に出るしかない、という住宅事情の能登で起こった今回の地震において、その100万円は一体何のためかわからない存在になりました。


むしろ、建物の解体や、町外への移住を後押しするものになりました。


そして、前述のように、自分の持ち家以外に「これから町のなかでこの建物を活用していこう」と試みた場合、自費での修繕費+購入費は最低でも100万円ということになり、現実的に手をつけることができず、解体を見守るしかできないという日々が続きました。




自然災害はどこで起こるか全く想定できませんし、発災した地域の特性、社会的背景も、それぞれ大きく異なります。

能登半島は、ご存知の通り高齢者の世帯がとっても多い。「残りの人生を考えると、この際、家を処分して仮設や町営住宅に入り余生を過ごすわ」という方も多く、「支援金もらってありがたい。使いきれないし定期で積み立てる」という方もわりといらっしゃると聞きます。


私たちは、もっと支援金欲しい、と言っているのでは全くありません。十分すぎる支援をいただいていることに心から感謝しています。


ただ、果たして、その貴重な支援が、地域の未来を背負っていこうという人たちにも適切に届くように運用されたのか?希望が持てるような使い方がなされているか?は、いたって不明です。



最近、「建物を解体した後の空き地の草刈りが大変だ」という町民の声を受けて?防草シートや砂利を設置するのに町の補助が出るようになりました。2分の1補助で最大50万円。


塩害が強いこの地域で、防草シートはおそらく数年ももたない。シートの間からも草は生えてくるし、真っ黒なので夏は暑いし、景観的にもよろしくない。塩害でボロボロになったプラスチックは手がつけられず地中に残ります。

砂利ももちろん間から草は生えるし、砂利を敷くと石が飛んで危ないので草刈機が使えず、よりやっかいになります。

いずれも、土地の使途は限られてしまうし、長期的に考えると余計に手間がかかることになる。


対処療法的な取り組みを続けている限り、ずっと復旧段階で足踏みすることになるんじゃないかな。




なあんて、いろいろと言っていますが、


能登はじめ日本の地方の魅力や価値というのは、「パッケージ」で括れない部分にこそあるものです。

そして、私たちはそんな能登が誇りだし、好きだからこそ、ここにいるわけです。


システムという重い腰がそうそう動けないのであれば、小さな集まりであるFutoは、フットワーク軽く、この地域らしい再生の形を、たとえゼロからでも探っていこうと思うのでした。



voluntary association Futo

​石川県羽咋郡志賀町富来地頭町

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