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「流行病みたいに、みんな解体解体」


これは、私のお世話になっている建築関係の方が嘆いた言葉です。


以前の記事にも書いたけど、何をもって、進んでいるというのか。

(「進んでる、進んでない」https://www.futonoto.org/post/_0530


それを明確にできないのが、災害からの復興というもの、なのかもしれません。


ただひとつ、「単に解体が進むこと=復興が進む」ということではないということはわかっていて欲しいな、と思います。


わかりやすく進捗を図るのは「目に見える変化」かもしれないけど、例えばメディアの皆さんから「解体が進んでない」とか「解体◯%達成」と聞けば聞くほど、地元の人も、なぜか解体を目標にしてしまいます。


もちろん、必要な解体は必要です。

だけど、解体しなくてもいい建物までもが解体されていくこの現状は異様だよ。


それを嘆いての、冒頭の言葉でした。



解体後の土地に新たに家を建てるというのであれば、「早く解体を」というのは当然。

だけど公費解体は、そういうお宅を優先的に解体しているわけでもなく、急いでいる人は自費解体してることが多い。

そして私の知る限り、解体後に家を新築する、という話は本当に数軒しか耳にしません。


そのわけは、高齢の方が多いことに加えて、物価・人件費が高騰しすぎて、とてもじゃないけど手が出ないから。


今、大工さんの日当は倍ほどにあがっていて、災害前は25,000円ほどだった日当が、40,000円ほどになっていると聞いています。

(公的な住宅や仮設住宅建設に従事する大工さんへの日当の吊り上げが、高騰の原因)


さらに材料費も高騰しているとなれば、いくら支援金と保険を合わせてたとしても、修繕費用も賄えないし、新築なんてもってのほかです。


近所の方は、「平屋の小さい家を建てようと思ったら7,000万円と言われた。この年齢になって借金かかえるなら、せめて今後、確実に家が売れる可能性のある場所に建てた方がまし」と、この町を出ていく選択をなさいました。


ここで言っておきたいのは、支援金をもっと増やしてくれればいい、という単純な話ではないということ。

公的な支援額が増えても同様に業者さんの価格が上がるだけ。同じことの繰り返しです。




Futoが、空き家を探しはじめたのは3月頃。

(「私的・半壊空き家調査」https://www.futonoto.org/post/_0305


みなし仮設としての利用や、町内での住み替え、今後の移住者の住まい確保を想定してのことでした。

仮設住宅の目処が立たず能登を出ていく人がいるなかで、希望者の数は多くないかもしれないけど、選択肢を増やしておきたかった。


昨年9月の水害発生後は、能登内での住み替えも想定して、もう一度本腰を入れて空き家情報を集め、できるだけ解体しないようにと促すよう力を入れてきました。


だけど、思い描いたように空き家マッチングは進みませんでした。

本腰入れるほどまで手がまわらなかったという至らなさもあるんだけど、大きな原因は、「空き家」の修繕に関する支援がなかったこと。


被災した方が空き家をみなし仮設として使う場合、家賃補助はありますが、地震発生した当時、その建物が誰かの住居でない限り、半壊でも大規模半壊でも、空き家の建物の修繕に対する支援はありません。

空き家に対してある公的サポートは半壊以上の場合の「解体」だけ。


たとえば、一部の屋根瓦だけがずれた空き家があったとします。

せめて応急修理の費用だけでも出れば、雨漏りが防げるし、今後、誰かに活用してもらえる可能性を残せる。

でも、空き家は応急修理の対象外。

雨が入ってしまえば家の維持はかなり厳しくなります。


あるいは、自宅が大規模半壊で住めないけど、町内の半壊の家に住み替えたい、という人がいるとします。

その世帯に支払われる基礎支援金は50万円(単身の場合は37.5万円)。

建物の購入補助が200万円(単身の場合は150万円)。


上述の通り、応急修理支援は対象外。

傾いた住宅の基礎復旧などを支援してくれる「被災宅地等復旧支援制度」も、地震発生時に住宅地として供されていた宅地のみで、対象外。


支援金で半壊の家を購入して修繕しようにも足りないし、いくら地震保険がおりてたとしても、それなら修理の必要がないアパートがある場所、つまり能登以外へ行くよね。



Futoが、半壊以下の空き家を確保して、ある程度修繕し、住める状態で提供することが理想でした。

でも、残念ながらその資金もマンパワーもない。(力不足)


そんなこんなやってるうちに、多くの解体業者さんが、町内の空き家を購入して住むようになりました。

一部損壊、準半壊の空き家は、情報が出ればすぐに売れ、空き家バンクの価格も高騰していきました。

建物が残ったからよかったと思うし、空き家を手放せた家主さんも願ったりだと思います。

一方で、彼らが去った後、あの建物は一体どうなるんだろう・・・。




話は公費解体に戻りますが、公費解体では、構造上別棟であれば建物の切り離し解体はOKだけど、2階建を平屋に減築する解体は認められません。

いくら、足が出た分の費用は負担すると言ったとしても。


耐震のために2階部分を取りたいという人がいてもかなわないし、2階だけ被害がひどくて1階は無事という場合でも、その棟全部を解体するか、2階も残して修繕するしか選択肢がありません。


個別案件を認めれば収集がつかなくなり、解体の進捗が遅くなるということが、おそらく認められない理由。

その気持ちもわからないでもない。


けど、解体を達成することよりも、減築することでその建物が安全に残って住める人が増えることこそ、本当に目指す先ではないのかな?


これは被災者のわがままなんでしょうか?





写真は、お正月の、神社の参道。


仮設住宅は狭くって、親族が帰省しても泊まる場所がないので、多くの方が日帰りだそうです。



ねえ、みんなで一生懸命、ゴーストタウンを作ってる?

voluntary association Futo

​石川県羽咋郡志賀町富来地頭町

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