全壊の家を直す
全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、一部損壊。
地震後の建物に関する罹災判定結果は同じでも、状況は家々で異なります。
そして、半壊でも家を壊そうとなさる方もいれば、全壊と判定されても、家を修理してすみ続けたいと思っている方もいます。
今回、「きのものおき小屋」で来てくださっていた建築士の橋本さんと、酒見地区にあるお宅へ伺いました。
酒見地区は砂地なので、液状化が起こっている箇所があります。
お伺いしたお宅も、家の方々下がってしまい、罹災証明の判定は全壊。棟同士の結束部分で割れているような状態です。
ただし建物自体の損傷は少なく、壁が落ちているということもありません。
解体して家を建てるには費用が高すぎるし、今後、息子さんが戻ってすみたいと言っているので、ある程度きちんと直して残したいと思っているそう。
どう直せばいいのか、誰かに相談したいが、そもそも誰に相談したらいいのかもわからなかった、とのことで私たちが紹介されました。
橋本さんはまず建物の一部を減らす「減築」を提案なさいましたが、お風呂の位置など、建物をすんなりと半分で分けることができない状態。
さらに、公費解体では「家の一部の解体」は認められていません。※
(たとえば家とつながった蔵だけが全壊だった場合、住居も一緒に解体しないと公費では解体できません。そのため、家は住める半壊状態でも、蔵と一緒に壊しちゃうって方もいます)
橋本さんは「難しいですね・・・」と頭を抱えつつも、その場で考えられる、二つの選択肢を提案してくださいました。
一つは、家を全てジャッキアップしてベタ基礎を作り直す方法。費用が高いが完全に家の傾きは直せます。もう一つは、家の下がっている箇所ごとにジャッキアップしてあげていく方法。家全体を持ち上げるよりは安価ですが、時間と手間がかかります。
いずれも家を建てるよりはいくらか安いかなというお話です。
お話を聞いて、持ち主の方もご家族と相談しますとのこと。
ともかく、誰かに相談したかったが、誰に聞いたらいいのかわからなかったので、よかったとおっしゃってくださいました。
でも次の問題は、「じゃあいざ工事に、となったときに誰にお願いすればいいのかわからない」
家の修繕というのは、ゼロから家を建てるのと工法や考え方が異なる部分もあるそうで、経験がある大工さんににお願いすることが重要だそう。
ただでさえ人生において大きなプロジェクトともなる家のこと。まして地震で傷ついている状態の家に手を加えるのであれば、信頼できる人にやってもらいたいというのは大前提です。
能登、石川県、北陸に腕のいい大工さんはたくさんいらっしゃいますが、能登全体で地震が起きている中で、いったい誰にお願いすればいいのか、いったいいつ工事をはじめてもらえるのか・・・
この問題はどの業界も同じです。
大工さん、設備屋さん、瓦屋さん、石工・・・限られたマンパワーをフル稼働している彼らの負担も過剰なものになっていて、心配する部分ではあります。
Futoとして今できることは「悩んでおられる方の声をすくいあげること」「誰かを紹介してつなげていくこと」くらいしかないかもしれません。
やるせなさを感じることもありますが、それでも「ここに残りたい」と思っている方の希望をつなげていきたいのです。