進んでる、進んでない
「ニュースでは全然進んでないって聞いたけど、どう?」
関東に暮らす親族からのメッセージ。
答えに困ってなかなか返信できずにいます。
毎朝の日課にもなっている、解体のおうちへの訪問も、あと少しだなあと思いながら今朝も散歩しました。

5月13日から解体がはじまり、今ではもう家の形はすっかりなく。
母屋と納屋の解体で合計ひと月かかるという予定を見て、当初は驚いたけれど、
この期間は、きっと家主さんにとって、そして勝手ながら私にとっても、「家をおくる」大事な時間でした。
ここ富来地区の被災家屋は「建っているけど住めない」というのが多くあります。
そのため、人間の力をもってして解体しなくてはいけません。
「本当に壊してしまってよかったのか」
「もっと、別の方法で、なにかできなかったのか」
「家がなくなったあとどうしよう」
そういった感情の揺れも、解体の経緯を見つめるなかで、徐々に現実を受け入れ、変化していった気がします。
もちろん、完全な更地になった後どうなるのか、時間を経てどういう心持ちになるのか、それはまだわかりませんが・・・。
建築士の橋本さんがおしえてくれましたが、分別が厳しくなり、このように丁寧に解体するようになったのは本当に最近のことだろう、と。
過去の震災と比較しても時間はかかりそうだし、まち全体、能登全体で解体が完了するのはいつになるかわかりません。
ただ、解体のスピードがアップすればいいのか?というと、「家と人による」としか言えません。
写真は、我が家の隣家。

長らく空き家で、今回の地震で被害を受けました。
解体する予定だそうだけど、まずサッシだけが取り外され(サッシは売れるらしいので)、見るも無惨な姿になっています。
正直これは早く壊してあげてほしい。
そのほかにも、
解体したのちその土地に家を建てる場合は、早く解体してあげてほしい。
倒壊したり隣に迷惑をかけるかもしれないと家主さんが不安に思っている建物も、早く解体にとりかかってあげてほしい。
危険な空き家、鉄筋ビルも、早く解体してほしい。
でも、公費解体の順番って、そういうことでもないんだよね。
「進んでいるのか?」
そう問われれば、やっぱり「進んでない」のかもしれません。
公費解体も進んでいないけど、進む=解体が進む、という単純なことではないから。
ただ、だんだんと、眼に見える前向きな変化、希望の持てる建設的なことが、必要な時になってきた気がしています。

今回の地震後、初めて知ったのだけど、木の家の解体現場ってすごくいい匂いがするんです。
ここら辺の建物によく使われている「能登ヒバ」がその理由のようで、もう何十年も前に建った家なのに、現場では新築みたいな香りが漂っています。
その匂いを嗅ぐたび、木々が「ぼくら生きてるんだぞー」って言ってる気がして、私はまた、泥棒のように現場を這いつくばって、材を譲っていただいてしまうのでした。

これは、解体前レスキューしたいと思っていたけど間に合わなかった、玄関の床材。
(匂いはしませんが・・・)
ユンボの下の瓦礫の中から1枚だけ見つけることができました。
最近は解体ばかりやっていたので、何かを作ることもしたいねって話をしています。