ある要人
- 2025年7月9日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年7月13日
女のスマートフォンが鳴る。
「要人と座談会がある。参加しないか」
電話口の男が神妙に言った。
・・・
夏といえば読書よね。ということで、今回は、星新一風にはじめてみました。
(本当はブログが久しぶりになってしまって、作文感覚を見失っているだけ)
さて、気を取り直しまして。
先日、とある座談会にお声かけいただくことがありました。
「氏名年齢職業、発言内容は、事前提出」とのことで、何を話そうかな、と最近のいろいろを考えてまとめていました。
結局のところ、発言内容を提出した段階で、お話できる時間はひとり2分(発言1分+返答1分)。「発言は簡潔に」とお触れがあり、会場との往復2時間、滞在時間含めた3、4時間を、簡潔な2分のために費やすより別の活動に充てさせてもらいたいな、と思ってお断りしたんだけど、せっかくまとめたので、ここに書いておこうと思います。
これが地震から1年半たった能登の今の課題の片鱗ネ、くらいに、なんとなく感じとってもらえたらうれしいです。
文体がカタイので、眠くなっちゃった方は、テキトウに読み飛ばしてください。
(あくまで志賀町富来地域の現状で、Futoの目から見た世界ですので、あしからず。「創造的」という言葉は石川県が掲げている復興のキーテーマで、今回は特に先方との共通言語になるかな?と、あえて多用しています)
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◆氏名
鶴沢 木綿子(つるさわ ゆうこ)
◆支援団体 Futo(フート)代表
Futoは、志賀町富来地域において被災者同士で立ち上げた、被災者支援・まちづくり活動を行う団体
◆発言内容
1.創造的な視点を持つ多様な主体が、中長期的に能登の復興・まちづくりに携われる仕組みづくりを。
背景)
地震から1年半経ち、災害復旧対応から復興・地域の再生・まちづくりへと徐々にフェーズが移行。短期・大人数のボランティアから、地域と深く関わり自発的・創造的に復興を担う存在が求められるようになっている。
一方、能登はもともと人口減少が進む過疎高齢地域。若手は自営業の方も多く、子育て中であったりして多忙。現地で、「復興に向けて活動できる人」が完全に不足しているのが現状。
過去の震災とは置かれている状況が異なる上、働き方やライフスタイルが変化しているなか、能登内外の、創造的な視点を持つ多様な主体が、多様な形で、中長期的に被災地に携われる仕組みが求められている。
1ー1.若手の失業者と被災地のマッチングを。
失業保険受給者の方による被災地でのボランティア活動を、就職活動として認めていただきたい
日本全国の失業者の若手(20代から40代)は約90万人以上いらっしゃるが、現在、失業保険受給中にボランティア活動を行うと労働とみなされ、手当の受給が後倒しになってしまう。
国として地方移住や多拠点居住を推進しておられるが、縁もゆかりもない方が急に地方・被災地にいくのはハードルが高い。
被災地などでの中長期的なボランティア活動は、有効なマッチング機会。
実際、今回の災害後、ボランティア活動を通じて県外から能登地域での転職につながった方もいる。
1ー2.都市部の企業職員やスタートアップ企業による、滞在型被災地支援の後押しを。
現地に行って能登の力になりたい、会社・仕事につながる視点での被災地支援を実行したい、という中小企業職員の方の声がある。しかし、本業との兼ね合いによる時間的・費用的な制約などがあり、うまく関係を築けていないのが現状(志賀町では)。
研修として若手職員の方を中長期・定期的に派遣をしていただく、企業活動の一環として能登に滞在し、支援活動に携わりながら新商品やサービスを検討していただくなど、相互にとって有意義な関係を築くための後押しを検討いただきたい。
空き地や空き家といったフィールドはたくさんある。
被災地だが、ここで何か新しいことが生まれていくという機運は、被災者の希望になる。
2.へき地ならではの、個性ある教育の場づくりを。
志賀町富来地域では小学校が被災し、現在、中学校の校舎を間借りしている状態。今後小中一貫教育を行う予定であると聞いているが、すでに旧志賀町の、人口の多い学校へ通う子たちも増えつつある。
学校がなくなり、子どももいない。空き地だけが広がり、この地域はどうなるんだという不安の声が多い。
一方、学校に通う(予定も含めた)子どもをもつ保護者たちからは、へき地だからこそ、能登だからこそできる特色ある教育を求める声も。
魅力的な教育は人を呼ぶ力がある。「公設民営」(公立校の民間委託)など、被災地・へき地だからこそできる特徴ある教育の場づくりの後押しをお願いしたい。
3.能登らしいまちなみ景観(建物)維持に向けた意識醸成、建物の修繕支援強化を。
黒瓦、下見板張りの能登建築は、点であるのではなく、面的にひろがっていることで、能登らしいまちなみ景観を作り上げている。能登建築は、能登の文化的アイデンティティの一つでもあり、重要な観光要素。
現在、建築に係る費用が高騰しており、支援金だけでは建物の修繕が困難。
一方、修繕可能な半壊の家でも、解体すると「みなし全壊」となり100万円受け取れる制度もあいまって、解体が促進されてしまっている状態。
地域内での住み替えや、今後、地域外から活動に携わってくださる方の住居場所・活動拠点として活用することも鑑みて、能登らしい建物の修繕を促進していただきたい。
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窓の外に広がる夏の青空。緑豊かな滑走路の脇には、数機の飛行機が停まっている。
空港を眺める一室に、20人ほどの若者たちが集まっている。
部屋をぐるりと囲うのは、重々しいスーツ姿の男たち。
「次の方」
呼ばれて一人の女が立ち上がる。
自己紹介を終えた女は興奮気味につづけた。
「いろいろとお伝えしたいことがあるのですが、まず、この発言にいたる背景を述べさせていただきます」
若者たちの頷きに背中を押され、女の声には、自然と熱がこもっていった。
「・・・地域と深く関わり、自発的・創造的に復興を担う存在が求められるようになっているんです。しかし一方」
「お時間です」
唐突に男の声がひびく。
女は、「の」の形に口を開けたまま、ぽかんとした。
司会役の男がくりかえす。
「お一人、1分です」
我にかえった女。なんとか口の形をもどして、
「でも・・・」
「もうすでに2分です」
「まだ、なにもお話しできていません」
部屋を囲うスーツ姿の男たちは、存在を消すかのようにしずまりかえっている。
若者たちが、ざわつきだす。
女はすがるように、部屋の片隅に目をやった。
そこには、目を閉じ、じっとうつむいて座る一人の男。
「要人・・・!」
司会の声が、女の視線を遮るように冷徹な声でいう。
「要人はお忙しい。1分と言ったら、1分だ」
(フィクションです)
