台湾レポート 教育編2 学生の話
- 13 時間前
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さて。そんなこんなでやってきた、福智教育園区。
学校見学に、サークル体験、学校で共生している動物との触れ合いなどなど、充実の二日間の詳細については、前置きが長くなりすぎたので制作中のレポートをご覧いただきたいと思いますが(えっ!)。
こちらでは、今回の滞在で特に、点について、記しておきたいと思います(これだけでもとっても長いのよ)。
さて今回のレポート冒頭掲げた視察の「目的」の中でも特に、福智教育園区の現場体験ではこの二つに重きを置いていました。
・オルタナティブスクールの「リアル」を知る。
・人が「自ら学び」「育つ」教育のあり方を模索する。
「教育編1」に記載した福智学園の教育内容は、見る限り「素晴らしい」と思う一方、ひねた見方ではありますが「理想と現実」の差はどれくらいあるのか、「リアル」は一体どうなのか、という点も非常に気になっていました。
また、もしそれらの理念が実現されているとしたら、それは一体どういう状態なのか、どういうふうに伝わってくるのか、ということも自ら感じてみたいと思っていました。
そんなこちらの思いに対し、ある一つの解を与えてくれたのが、福智で学ぶ生徒さんたちとの会話でした。
そうそう。
お話するのが遅れてしまいましたが、今回の台湾視察のFuto側の参加者は、代表の鶴沢と、もう一人、石川県在住の中学1年生の女の子が一緒に旅してくれました。(当初同行予定していた富来在住のファミリーは直前にインフルエンザにかかってしまって、残念ながら行けなかった)
後述しますが、今回の旅は、彼女と一緒でないと得ることの出来ない、出会いや気づき、学びに溢れていました。
また、福智の見学については、愛知県の豊田市で福智の勉強会に参加している皆さん(15名ほど。年齢層は10代から60代)が修学旅行的に訪れていて、その団体さんと一緒だったおかげで、これほど濃厚な学校見学・体験をさせていただくことができました。
ちなみに今回の滞在プログラムには「学生さんたちとの交流」というのもなんとなく組み込まれてたんだけど、そもそも他の参加者の皆さんには私のような魂胆?思惑がないのが当然で、学生さんたちとの会話もだいたい「学校たのしい?」「はい」とかで終わるもの。
しかし、こちとら「せっかく中学生がきてるからお互いもっと交流しましょうよ!」とかなんとか言って、通訳さんを引っ張り回し、中学生や高校生の皆さんに対して大人気も遠慮もなくたくさんの質問を投げかけていたこと、先立って告白し、反省させていただきたいと思います。
真摯に答えてくれて学生さん、本当にありがとう。
【中学生 女子】
日時:3/28(土)午後
対象:サークル(部)活動を行っている中学生女子
Q.福智では学校生活も寮生活もみんなと一緒って聞いてるけど、生徒同士で喧嘩したりすることはないの?
A.別に。嫌だったら無視すればいいだけだから。
Q.福智の学校について、どう思ってる?
A.「閉鎖的」。
Q.どういうところが、閉鎖的って感じるの?
A.外部との接触もないし、スマホを持つことは禁止。休日も学校外には出られないし、外出のためのルールがある。家族とも年に数回しか会えない。
Q.厳しいね。休みの日は何してるの?
A.休みの日は学校の校区内で遊ぶか、山登りとかして過ごすことが多い。たまに買い物に行くくらい。
Q.例えば、映画を見にいくとかはできるの?
A.映画は基本的に禁止。
Q.美術館は?
A.美術館も基本的にダメ。どうしても行きたい場合は、どうしてその展示を見たいか、事前に先生に申告しなくてはいけない。それで許可がおりれば出かけることができる。
さて、これを読んで皆さんはこれをどう思われたでしょうか?
福智の学校では、基本的にスマホやインターネットを一切禁止していますが、その上、映画館も美術館も自由に行けない、となると、実際、その印象は「微妙」ですよね。
法師さんとはじめて会った時の私もそうですが、新興の仏教系団体と聞くと、日本人の多くはまず「カルト」の疑い持つことが多いのが現実だと思います。
たとえ法師さんのことを人間として信頼していたとしても、私自身、常に「構え」は持っていたし、宗教団体だということは心に留めていました。
だからこそ、この中学生が語ってくれた「閉鎖的」という言葉に対して、「ああ、やっぱりね」と思ってしまった部分があります。
実際、私も、そして、今回の旅を共にした子(中学生)も、この会話の最後は言葉少なになってしまいました。
しかし、良くも悪くもこの「閉鎖的」という言葉が、滞在中の私にとって非常に重要なキーワードとなりました。
私はその後、学生たちと話す機会があるたびに、「閉鎖的と聞いたがどう思うか」ということを質問しつづけました。
文字になるとどこまで温度が伝わるかわかりませんが、以下、学生たちとのヒアリング内容をできるだけそのまま、掲載します。
【高校3年生 男子】
日時:3/28(土)20:30-21:30
対象:ホームステイ先を掃除してくれた高校生
(呉さん)
Q.何歳から福智に通ってる?
A.僕はもともと台北に住んでいて、小学校3年から福智に入っている。
Q.(最初に会った時に少し日本語で話してくれたので)日本語が少し話せるのはなんで?
A.日本のアニメが好きだから。
Q.アニメは見れるの?
A.学校とか寮では禁止されてるけど、夏休みとか、実家に帰った時に見てる。
Q.今、高校3年生だけど、卒業後はどうするの?
A.大学では地球科学科に受かっているけど、エンジニアになりたいから、編入すると思う。
Q.どうしてエンジニアになりたいの?
A.お金を稼ぎたいから。
Q.お金を稼いで、何を実現したい?
A.自分の家を建てたい。
Q.じゃあ、卒業したら福智とは関係ない生活をすることになる?
A.それはない。お金を稼いで、そのお金で福智を支援し続けたいと思ってる。
(陳さん)
Q.福智の生活はどう?
A.厳しいし、大変。
Q.卒業後はどうするの?
A.大学に入るけど、1年は休んで自分の好きなことをする。自転車で台湾一周旅行をしたいと思ってる。
Q.今日、中学生の子から、福智の学校は「閉鎖的」と聞いたけどどう思う?
A.うーん。どうかな。(明確には言わなかったけど)僕はスマホも持っていて、彼女もいる。彼女は福智外で出会った人。別の宗教だけど特に問題はないかな。基本的には恋愛も禁止だけど、こっそり知り合った。
Q.寮ではどんなふうに過ごしてる?
A.おしゃべりが多い。あとはカードゲーム。小説を読むのも好き。
Q.学校とか寮の中で、いじめとか、からかいはない?
A.ある。3年間、誰ともしゃべらない子もいた。(本当は自分のこと)
Q.いじめられてしまった子は、そういう時、どうするの?学校をやめちゃう?
A.僕は台南出身で、小学校3年でここに入ってきた。それまで別の学校にいていじめられていて、自分の意思で福智を選んだ。福智に入ってからもあまり友達できなかったけど、自分に原因があるということはわかってたから、変わろうとして努力した。福智の前も、自分に原因があるというのはわかっていて、でも、変われなかった。
Q.福智で変わった、ってことは、福智の仏教的な教えがあったから?
A.ここの環境かな。全寮制で、家族にも会えない状況。学校だけじゃなくて生活まで一緒にするから、うまくいかないとずっと嫌な気分で過ごさなくてはいけない。この環境では、自分が「変わるしかない」と思ったし、「自分を変えたい」とも思った。それからは、例えば人への対応とか、誰かに嫌なことをされた時の振る舞いとかをちょっとずつ変えていった。今は、全員が友達。
【高校3年生 女子】
3/29(日)昼食時
対象:昼食の台湾素食を作ってくれ、昼食のテーブルで同席した高校生
(王さん)
Q.昨日中学生の子と話をしたら、スマホもないし「閉鎖的」と言っていたけどどう思う?
A.うーん、私はそうは思わないかな。もちろん福智の環境だけを捉えるとそれは確かに閉鎖的に見えるかもしれないけれど、ここの先生はいろんな知識を持っている。「知識」という意味ではとても開かれているし、全く閉鎖的ではない。
Q.(髪を染めていてピアスや指輪もつけていたので)服装はある程度、自由が認められているの?
A.今日は日曜日でイベントの特別な日だから、まあいいでしょう?(笑)。髪の毛については、実は私は白髪がひどくて染めている。先生も最初は指摘してたけど、諦めてくれたみたい(笑)。
Q.卒業後はどうするの?
A.福祉のサービスをしたい。虐待を受けている子どもたちやDVを受けている女性の支援をしたいと思っている。
(陳さん)
Q.卒業後はどうするの?
A.大学に進む。学校の先生になりたい。主に障がい児たちを支援する学校の先生になりたいと思ってる。
Q.日本の教育は、受験・受験で、公立は決まったカリキュラムをこなすだけ。いい大学に入ることを目的にしているという状況が続いている。そのひずみからいじめもあったりする。
A.私は3歳から親の仕事の関係で中国に行っていて、学校に通っていたけど、ひどいいじめに遭ってた。台湾と中国の関係が悪かったことも影響しているけど、中国も日本と同じく学歴至上主義で、勉強・勉強で、すごく競争心が強かった。「台湾に帰りたい」と思って親に相談したら「台湾に戻るなら福智しかない」と言われて、中学校3年から入学した。
Q.中学生の子と話をしたら、スマホもないし「閉鎖的」と言っていたけど、どう?
A.スマホはないけど自分の時間がたくさんある。その時間をどう使うか考えることができるし、人と比べて焦ったり比較することもない。自分が「これをやりたい」と思えばそれに突き進める時間と環境がある。例えば福智に来たばかりの子は、すごく閉鎖的だと感じるかもしれないし、合わない子がいるのも事実。環境に馴染めなくてやめていった子ももちろんいる。でも、今ここに残っている子は全員、自分の意思でここにいて、ここで学んでいる。
Q.もしいじめがなければ、ずっと中国に居続けた可能性もある?いじめがなくても台湾に良い環境があるから、台湾に戻りたいと思っていた?
A.私にとっては福智が自分に合う場所であり、自分に合う環境だった。大事なのは、そこが「良い場所か、良い環境か」じゃなくてそこが「自分にあう場所かどうか」。それを見つけることが、何より大切だと思う。
文面だけで伝わる情報は限定的かもしれませんが、彼・彼女たちとの会話を通じて強く感じたのは、これはすべて「彼・彼女たちが自ら経験し、自ら考え、自ら乗り越え、自ら得てきた考えと言葉だ」ということです。
そこには誰かに教えられたとか、大人びたことを言っているとかではない深みと重みがあったし、聞いているこちらが何度も背筋を正されるものばかりでした。正直言って、「日本の大人でもこんなこと言えるか不安」とさえ感じてしまった。
また、最初の中学生の子が語ってくれた「閉鎖的」という感想は、改めて非常に重要だったと思います。彼女の感覚はいわば「普通」だということ。
もし、宗教団体の運用する全寮制の学校に通うほんの13歳の子が、すでに学校の方針を100パーセント納得して肯定的に語っていたとしたら、私は一種の洗脳を疑ったかもしれません。
全寮制で親元を離れ、外部との関わりや情報が制限された中で、単に知識を習得するだけではなく「自ら考える」ということを学びとして求められ続ける福智の子どもたちは、一般的な学校よりは厳しい状況の中で学生生活を送ることになります。
小学・中学から高校までの間、家族に甘えることも、ネットワークやデジタルの世界に逃避することもできない環境で、悩んだり苦しんだり、逃げ出したくなることも本当にたくさん経験するんだと思います。
その度に、彼、彼女は、「自分はなぜここにいるのか」「なぜ自分はこんなに苦しいのか」「自分は一体何(誰)のためにここにいるのか」といったことを含めて、常に自分自身と向き合いつづけるのだと思います。
そういった経験を幼い頃から繰り返し、そうして高校3年生になった頃には、自分の置かれている立場が自分の選択のうえにあることを知り、自分らしさを俯瞰して見つめることができ、先生や友人との関係の中でものごとが成り立っていることに感謝し、厳しさや学びの意味を自分なりに解釈して、自らの言葉で語れるようになっている。
これが、福智の教育なんだな、と感じました。










