台湾レポート 手仕事編2 継承と伝統のアップデート
- 5月28日
- 読了時間: 6分
事前情報を詰め込みすぎて混乱ぎみなまま台湾にやってきた私ですが、今回、台湾の手仕事を知るために訪問したのは以下の3ヶ所です。
◆Kamaro’an
◆新北市烏来泰雅民族博物館
◆達卡(ダカ)工作坊/ 高林美鳳(カオリン・メイフェン)さん(「烏来織藝協会」のメンバー、達卡工作坊代表)
詳細なレポートをここにも掲載しようか迷ったのですが、長くなりすぎるので、省きます。
(メモに毛が生えたような感じですが、帰国直後に作成したので熱量だけは結構あるレポートはこちらをどうぞ)
さて、このブログのタイトルにもありますが、今回この3箇所の訪問を通じてのキーワードは「継承」そして「伝統のアップデート(更新)」。
ここにも書いたのですが、私たちは、今回の地震を機に発掘された富来のものづくりや手仕事についての聞き取りを行い(必要に応じて再興し)ながら、手仕事を「継承」すること、さらに、それらを継続的に学ぶ仕組みを構築すること、を目指しています。
加えて、というか、それが実現するためにというか、その結果というか、これまでブログでは名言してこなかったのですが、私は、継承や学びの要素を含有した上、地域全体を「手仕事の産地」として築いていけないか?ということを考えています。
竹細工でも織物でも、古布をいかしたものでも、木地でも陶芸でもいい。むしろ複合的な方がいいと思っています。
多層的な手仕事の産地。
「手仕事の産地」の定義については後のレポートに譲りますが、ものづくりや手仕事を学ぶ場があるということは、そこで継続的に手仕事が行われていることが大前提だと思います。形だけの継承だけはなく、生きている手仕事がそこにありつづける。これは絶対に必要です。
もちろん日本各地で継承も伝統のアップデートに向けてさまざまな取り組みが行われているのですが、今回は台湾においてのそれを、リアルに知り、感じてみたかった。
そして、今回お伺いした訪問先では、それぞれ異なる側面からの「継承」そして「伝統のアップデート」へのアプローチが行われていました。
以下は極私的で略式なまとめになりますが・・・
Kamaro’anさんは、「伝統的な原住民の技法」を現代に受け入れられやすく使いやすい革製品に採用したり、「伝統的な壺の意匠」をバッグの形に展開したり。あるいは、原住民の方が生活の道具を作る上で欠かせない素材であった「シュロガヤツリ」を栽培しランプシェードに用いるなどといった形で「技術の継承」と「伝統のアップデート」が同時に行われていました。



一方、タイヤル族の皆さんは、民族間で伝統的な織物を学ぶ教室を運営・継続するという形で伝統的技術の継承を行いながら、伝統的な紋様を生かした機械織の布をつくったり、素材を麻から綿へ変更したりする形で、伝統のアップデートをはかっていました。


(ここでは省いてしまっていますが、タイヤル民族博物館での学習が今回のハイライトだったと言っても過言ではありません。しかも、訪問直前、google翻訳のよくわからないかもしれない英語中国語でツアーを申し込んだのに大変親切に受け入れてくださったどころか、タイヤル文化の継承者である、高林さんをご紹介くださったタイヤル民族博物館の方には本当に感謝しかありません。また行きたい・・・)
いずれも、私たちがこれから行おうとする取り組みにおいて、そして台湾原住民の手仕事を取り巻く現状について、非常に深い学びを得ることができる出会いでした。書きたいことはたくさんあるんですが、そうすると永遠にこのレポートを終えることができないので、二つの項目に絞って、言及しておきたいと思います。
それは「幾何学模様と装飾」そして「素材」です。
振り返ってみると、Kamaro'anさんでは、原住民を意識させる幾何学模様などの装飾は、極力省かれていました。
そのことを受けて私は、自分が原住民の手仕事=幾何学模様や装飾と認知していたことを発見しました。

一方、タイヤル族では幾何学模様と装飾こそが彼らの織物の独自性であり、場合によってはアイデンティティ(狩りが上手とか戦いに強いとかいう人のアイデンティティとしてのシンボル)にもなっており、継承されるべき技術の中心でもありました。
しかし、模様や装飾が中心に据えられているため、幾何学模様と装飾を施した布、という以上の展開に苦しみ現代社会へ適応しきれていない側面も感じられました。


また、素材に関しても同様で、Kamaro'anさんは、「採算性や実現可能性」を冷静に判断し、製品の素材はイタリアやタイから輸入したものを使っているとおっしゃっていました。ただし、すべてを地域外の素材にするのではなく、啓蒙的な意味合いも含めた上で伝統的な植物「シュロガヤツリ」を栽培し実際に製品に展開しています。
また、革はイタリアだが原住民の方が伝統的に使ってきた素材・手法で染色を行うなど、素材に関してもハイブリッドな方法をとっていました。

一方、タイヤル族が織物や道具に用いてきた素材は麻や木の皮、籐で、それらを自然から採取し加工することを含めたこう以前全体が、伝統的な織物の全体像です。
しかし素材の採取や加工にはとても手間がかかるので、現在は途絶えつつあり、技術継承の教室でも基本的には「織り」の技術のみが継承されていました。
織られる素材も、最近では加工しやすい綿が用いられています。


これだけを比較し勝手に考察すると、「現代社会への伝統技術の展開」として、正直、成功していると言えるのはKamaro'anさんだと言えると思います。
”台湾先住民族(主にアミ族)の伝統的な手仕事を現代のライフスタイルに合う製品へと昇華させ、原住民の若者に安定した雇用と文化継承の場を生み出す”という目的を叶えるためには、まず自身の製品が広く世に知られること、多くの人の手に届くというのは、非常に重要な要素です。
しかも洗練されたブランドとして認識されることで、これまで偏見や差別の視点がもしかしたらあったかもしれない若い世代や都市層の、原住民への意識転換をはかることも可能になります。同時に、採算をとることで継続的な雇用も生み出せるのです。
では、タイヤル族の皆さんや高林さんたちが間違いか、というと、全くそうではなく。
ただ、どこを目指してきたかの違いだ、とも、言える気がしています。
私は、この2か所での学びが、今後の私たちに重要な示唆を与えてくれていると感じています。
伝統的な手仕事を継承(再興)し、継続的に伝えながら、「産地」化していく上で、何を変化させ、何を残すか。
もちろんそれが美しい、かっこいい、そしてある程度広く認知されて受けいられるものである、あるいは(経済的にも)継続していくための視点も非常に大事です。ただ、それだけを目指していては、きっと、迷ってしまう。
本質を見失わないためにも、迷った際に立ち返る位置みたいなものを持ちつづけることは、とても大切なことだと思っています。
つづく
